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57March, 2001
樽をつかう

春はそこまで…

寒かった今年の冬もようやく終わりを告げ、やっと春めいた陽気の日もちらほら。本格的な春はまだ先ですが、3月に入り、なんとなくそわそわしてきました。今年の冬は記録的な降雪で(雪国の方には恥ずかしいのですが)雪かきスコップ売り切れの店が続出しましたが、日当たりの悪いところの雪もようやく消え、剪定などの農作業に励む農家の方々の姿が目立っています。ぶどうの根が水をあげるようになるまでの僅かな間に、畑の整備、特に古いぶどう棚の修繕(針金の張り替え)などの仕事を片づけなくてはなりません。「春の天気」になるに従って、周期的に雨が降るようになり思うように進みませんが、のんびりもしていられませんので、週間天気予報とにらめっこで段取りを決めています。
さてワイナリーの中では昨年のワインのろ過やビン充填の作業が平行して進められています。ビン詰めのタイミングは大雑把にいって、より早飲み(早飲み競争ではありません。あまり熟成せずに、という意味です。念のため…)タイプで果実の香りをより残したいワインは早く、そうでないものは後回しにします。もちろんオーク樽で熟成しているワインは、その熟成が目的とするところまで終わってからになります。ところで、オーク樽は木で出来ていますので(当然ですが)ステンレスタンクのように完全に洗浄殺菌することが出来ません。樽の内側のワインに接している面ではある程度までワインがしみ込んでいるでしょうし、洗浄後に殺菌剤などを使うと、それを完全に洗い流すことができないからです。一度ワインを入れた樽は充分な管理がされないと(管理されても時々は!!)ワインに不快な香りを付けてしまうような微生物が繁殖して使えなくなってしまいます。一般的には空樽の中で硫黄片を燃やしたり、直接亜硫酸ガスを吹き込んだりしますが、完全な方法とはいえません。最も良い方法は常にワインを入れておくこと、などといわれています。樽は決して安価なものではありませんし、樹齢数十年以上のオークを材料としていますので、大切に扱わないといけません。ワインメーカーにとって樽の使い回し(プログラム)を考えることは、樽熟成によってワインの質をより高めながら樽を有効利用していくという意味で、非常に重要です。あまり樽の香りだけが突出しないように注意しながら新しい樽を使い(そのために樽購入の資金を確保し)、何度か使った樽も別のグレードのワインに使ったり、その間空き樽にならないようにワインを入れ、樽から出したワインはビン充填していく、という作業の段取りをテースティングによって熟成の度合いを確認しながら進めていきます。