今年のワインの仕込みも無事終えることができました
怒濤疾風の如くすぎた9月に続き、10月もあっという間に過ぎて行きました。9月からの高温続きで例年10月中旬になる甲州種の収穫も10月4日から始まりました。収穫中は好天に恵まれ、順調に作業をすすめることができ、予定通り収穫を終えることができました。甲州種の後は、カベルネソービニオンを10/14に収穫しました。糖度もまずまず、色付きもぶどうの状態も良好でした。ぶどうは全て液体の形になり、タンクへ納められました。殆どのものはアルコール発酵を終え、タンクはしっかりと密閉されています。破砕機や圧搾機も丹念に洗浄し片付けられました。慌ただしかったワイナリーの中も久しぶりに静けさを取り戻しています。
さて、今年の天候は異常続きだった昨年に比べるとはるかに”正常”だったと思います。しかし、梅雨以降の天気パターンとして、雨が集中的に強く降り、その後湿度も気温も高い状態が続くことが多かったような気がします。雨の日数はそれ程でもないのに降水量が多く、日照時間は長い、ということでしょうか。正確にはアメダスのデータ等を見る必要がありますが、今年、一部の品種でベト病や晩腐病が多く発生したのも、この天候パターンの影響と考えられます。山梨がぶどう栽培に適しているとはいえ、ぶどうにとって最も大切な開花時期が梅雨にかかり、収穫直前に台風シーズンを迎えることにはかわりありません。このような条件下でも、完熟した果実を得られように品種や系統を選択し、雨対策や病害虫防除を適切に施した栽培をすすめることが大切なのです。
ぶどうの出来は…
この時期になると”今年のぶどうの出来はどうですか?”という質問をよく受けるようになります。新聞紙上でも”今年のボルドーので出来は…”といった通信社から発せられた短い記事を目にすることがあります。これらの”ぶどうの出来”に対する最も簡潔な答えは”まずまず”という言葉でしょう。このコーナーでもまずまずということばが幾度となく使われています。”ぶどうの出来”とは何でしょうか。糖度、酸度、色付き、風味、収穫量、病果の有無。ぶどうそのものの状態だけでなく、一年を通して天候条件に影響される作業性、ぶどうで生活の糧を得ている農家にとっては取引価格も大切でしょう。そしてこれらの条件が栽培している全ての品種において勘案されて”ぶどうの出来”が表現されるとしたら、大変な情報量になります。そこで登場するのが”まずまず”という言葉なのです。はっきりと良し悪しが判断されるならともかく、”この品種のこういうところは良くなかったけどここは良かった”という状況が積み重なった場合、全てを網羅して説明するかわりに、安直な言葉が使われるのです。”それは不親切だ。詳しく正確に伝えてほしい”という方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれは大変困難だといわざるを得ません。大げさにいえば、情報の受け手にもその困難さにおつき合いして覚悟が必要になってしまうのです。