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85July, 2003
ぶどうの病気

ぶどうの実も日に日に大きくなっています。

ジメジメとした天候が続いています。6月に入り甲府盆地でもほぼ平年並みに梅雨に入りました。真夏のような日差しが降り注ぐ梅雨の中休みもありましたが、曇り空にシトシト降り続く雨、と梅雨らしい日が続いています。梅雨入り後の降水量も平年並みでしょうか。これからは梅雨末期特有の集中豪雨が気がかりなところです。私達の生活にとっては不快極まりない時期ですが、日本の風土を特徴づける上では大変重要な季節ともいえます。
5月下旬から6月にかけて開花したぶどうも結実の時期を終え、小豆から大豆ほどの大きさになってきました。今年は5月の天候が不順でしたので、一部の品種で若干結実不良が見られますが生育は概ね良好です。この時期にぶどうは盛んに細胞分裂を繰り返し粒の大きさは日増しに大きくなっていきます。

甲州種の房も収穫時の大きさに着実に近づいています。(7月1日撮影)

この時期は雨対策が重要な仕事です。雨によって感染が広がる病気に弱いぶどうには18cm四方のワックス紙で一房ずつ「カサ」をかけ保護します。大変な作業ですが効果絶大です。(シャルドネ)
青梅のように堅い実も、日にかざすと種が透けて見えるようになってきます。(シャルドネ)

ぶどうの病気。

ぶどうは様々な農業作物の中でも、最も病害虫の多いものといわれいています。主にカビなどの病原菌によるもの、害虫によるもの、ウイルスによるものに分けることができます。カビなどの病気に対しては、薬剤散布や栽培上の管理によって病原菌が繁殖しにくい環境にするなどの対策が考えられます。害虫に対しては主に殺虫剤などの散布、ウイルスによるものは植えてしまってからでは対処のしようがありません。つまり放っておくか伐採してしまうかのどちらかです。
この時期は適度な温度と湿度により様々な病原菌がぶどうの組織に繁殖してきます。品種によって病気に対する抵抗性が異なりますが、収穫量や品質に直接大きな影響を及ぼすものはベト病、灰色カビ病、晩腐病(バンプ病、おそぐされ病)です。ベト病の発生時期は6月中下旬、晩腐病は収穫直前、そして灰色カビ病は正に今が発生時期です。病原菌Botrytis cinereaは貴腐菌として有名ですが、ぶどうが熟する前に発病するとただの腐れです。不幸にして発病してしまった場合は薬剤散布ということになりますが、一度広がると薬剤だけで抑えるのは難しいこともあり、発病前の予防的な薬剤散布が重要です。放っておくとあっという間に広がってしまいますので、下の写真のように侵されてしまった房は切り落とします。
さて、ウイルス病の対策ですが、感染していない苗を植えるということしかありません。一見簡単そうですが、なかなか難しいこともあります。例えば症状が現れるまで時間がかかったり感染経路がはっきりしなかったりと、実際のところよくわかっていないことも多いのです。代表的なウイルス病は「リーフロール病」で葉が裏側に向かって激しく巻き込む症状が現れます。一般的にこのウイルス病に感染したものは糖度が上昇せずにぶどうの品質が低下する、といわれますが、症状がでていてもそこそこのぶどうが収穫できることもあり、本来さっさと処分するべきところですが判断に躊躇することもしばしばあります。

灰色カビ病が発病したシャルドネ。
リーフロールに感染していると思われるメルローの葉。
正常なメルローの葉。