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18December, 1997
新酒のビン詰

今月のぶどう園

すっかり葉も落ちたぶどう園は急速に冬の装いになっていきます。とはいうものの暖冬傾向のせいか、落葉もすこし遅かったようです。
この時期のぶどう園の仕事といえば施肥。有機肥料を中心に散布した後、トラクターで耕します。どこの畑もだいたいこの時期に施肥をするので、風邪向きによってはあちらこちらから”有機”の香ぐわしいものが漂ってくるのです。

今月のワイナリー

11月下旬、機山ワインでも新酒を瓶詰めしました。といってもほんの少しなので、作業そのものはあっというまに終わってしまいます。発酵が終わったばかりのワインは果汁に含まれていた不溶物や酵母が含まれているので、濁った状態です。最近ワインでも”にごり酒”のようなものも発売されていますが、それに似た状態です。濁ったワインから澄んだワインにするためにろ過をしてからビンに詰めます。フレッシュさを失わないようにちょっと気を使います。新酒では熟成したワインのように”熟成による調和や深み”などは期待できないので、発酵が終わった段階で勝負あり!!というところです。

今月の読書会

今月は伝記物を取り上げてみました。
• 川上善兵衛伝
木島章, 1991, ISBN 4-484-91303-8 1200
日本のぶどう育種の先駆者、川上善兵衛の名をなくして日本のぶどう栽培の歴史を語ることはできません。マスカットベリーAをはじめ機山ワインの赤ワインの主要品種のブラッククイーンなど数多くの新品種を創出し、初期のワイン産業振興に大きく貢献しました。しかし、明治から大正にかけての時代。ワインにもぶどうにも大きな市場があったわけもない状況で、自宅の庭園までもつぶして農場を開墾し、川上家の財産も使い尽くしてしまうまでに善兵衛を駆り立てたのは、日本でも品質の高いぶどうやワインをつくり出すのだという信念としかいいようがありません。日本のワインはどうも…と思っているあなたにおすすめする一冊です。


• パスツール
ルネデュポス著 TDブロック編 長木大三 田口文章 岸田綱太郎 訳 学会出版センター ISBN4-7622-9804-2 2500
ルネデュポスの原著”Pasteur and Modern Science”をパスツール研究所創立100周年記念に編集し直した訳本。訳者もそうそうたるメンバー。パスツールというと酒石酸の光学異性体の発見や低温殺菌法や狂犬病や…とたいていの人が知っている業績が次々と思い出されます。それぞれの発見が後の時代に与えた影響を考えると、本当に計り知れないものがありますが、これらの研究がどう関連していたのかを知っておくのも、自然科学が細分化専門化した現在には、意味あることだと思います。パスツールの才能と魅力を存分に伝えてくれます。

今月のひとりごと

11月もあっというまに終わってしまいました。10月の異常乾燥とはうってかわって、雨が多かったみたいです。ぶどうにとってはいいことですけどね。冬に充分雨が降って、夏乾燥する、というパターンが理想ですけど、日本は冬乾燥して夏湿気が多いという逆パターン。でもそんな気候にはそれに適した栽培があるはずです。てなことを考えならがら、有機肥料を畑にまくワタシでした。