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127January, 2007
”温暖化”ですか?

あけましておめでとうございます。
あけましておめでとうございます。本年も機山ワインをよろしくお願い申し上げます。
さて昨年は皆様にとってどのような一年だったでしょうか。ぶどう栽培者にとっては不順な天候に苦労が多かった年でした。低温続きの春、日照不足、幾度と続いた長雨。「異常気象」と簡単に片づけてしまいがちですが、はてして「正常気象」というものがあるかも疑問です。平年値とは毎年の値をならしたものにすぎず、平年値が毎年続いた結果ではないでしょうし、自然とは大きく変動しながら移り変わっていくものだと思うからです。

あるテレビのニュースキャスターは、台風の進路が微妙に変わったことで日本海で「エチゼンクラゲ」が大発生したニュースを伝えた後で、「台風の発生が増えたり、進路が変わってきたもの二酸化炭素排出による温暖化によるもので、その裏には巨大な利益を得ながら大量の二酸化炭素を排出し続ける輩がいる」という趣旨のコメントを発し顔をしかめていました。また別のテレビニュースでは有名なジャーナリストが一年の気候を振り返り「夏夏夏冬」という自製熟語で温暖化現象を皆の努力で食い止めようと呼びかけていました。昔から台風の多い年も少ない年もあったはずですし、その進路もまちまち、昨年の春は低温に悩まされ、決して「夏」ではなかったはずです。短時間でニュースに味付けしなければならないとはいえ、あまりにも乱暴な論調です。もちろん人為が自然を取り返しの付かない形に変えてしまっているとすれば、それは大きな問題でしょうし、無駄なエネルギー消費を減らしていかなければならなのは、気候の変化とは別次元の問題として大切でしょう。しかし、多面的で冷静な検証を伴わない、一面的なイメージだけでつながれた言葉がメディアやネット上にもあふれているように感じます。

私たちは日頃ぶどう園で自然現象と向き合い、ある時は作物に破壊的に作用する気候現象を受け入れ、そしてぶどうからワインを造り出すことでさらに微妙な自然条件の差異を感じ取ることを生業としています。栽培や醸造の現場で実感する様々な事柄を、ワインを通じて消費者に伝えることができないか。大げさにいえば、自然、農、食、地域、といった社会で語られる問題に対して、私たちなりのメッセージをワインに込めて伝えられるのではないかとさえ思います。そのためには常に基本に立ち返り、ぶどうやワインを謙虚に観察し続ける努力が欠かせないと思います。そしてその結果として生み出されるワインが、食卓を彩り楽しい語らいのひとときの一助となれば、これ以上の幸せはありません。

正月明けにはぶどう園での剪定の作業や、スパークリングワインのデゴルジュマン(澱抜き)、昨年のワインのろ過などの作業が待っています。一つ一つの作業を確実にこなしながら、今年も充実した一年にしたいと思います。